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ウェブアクセシビリティ導入前に/義務化された合理的配慮とサイト運用の考え方

ウェブアクセシビリティとは、障害の有無や年齢に関係なく、誰もが快適にWebサイトを利用するための考え方です。
具体的には、視覚障害者のためのスクリーンリーダー対応や運動機能障害者のためのキーボード操作対応、高齢者のための文字サイズ調整機能など、さまざまな利用者に配慮した実装を指しています。
近年では法的要件としての重要性も高まっており、多くの企業や組織がウェブアクセシビリティの向上に取り組んでいます。またアクセシビリティの改善は、サイトの使いやすさを全体的に向上させ、検索エンジン最適化(SEO)にも好影響を与えるなど、ビジネス面でもメリットが大きいです。

この記事では、ウェブアクセシビリティの基本から実践的な運用ステップまで解説します。

目次

1.ウェブアクセシビリティとは

ウェブアクセシビリティとは、すべてのユーザーがWebサイトやモバイルアプリをスムーズに使えるようにするための設計概念です。

ウェブアクセシビリティの概要

ウェブアクセシビリティの概要

ウェブアクセシビリティとは、年齢や障害の有無に関係なく、すべての人がWebサイトを快適に利用するための考え方です。たとえば、視覚に障害のある方が音声読み上げソフトでWebサイトを閲覧できるようにしたり、手の不自由な方がキーボードだけで操作できるようにしたりすることなどが含まれます。

法的な要件について

近年、ウェブアクセシビリティに関する法律が整備されたことで、さらに重要性が高まっています。日本では、2024年4月に施行された「改正障害者差別解消法」に基づき、民間企業が障害者に対する合理的配慮を提供することが義務化されました。ただし、ウェブアクセシビリティ対応に関する義務の内容は、企業規模や業種に応じて異なります。

国際的な基準としては、W3Cが策定した「Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)」が広く採用されています。アメリカではADA法、欧州ではEN 301 549など、これらの基準に基づいた法律が制定されています。これらの法律は、ウェブアクセシビリティの遵守が企業の信頼性向上につながることを表しているといっても良いでしょう。

アクセシビリティ改善のメリット

ウェブアクセシビリティを改善することで、誰もが使いやすいWebサイトになります。それにより、多くのメリットを享受することができます。

メリット 事例
潜在的な顧客層が広がる 高齢者の方や一時的に怪我をされている方なども、快適にサイトを利用できるようになる。
検索エンジン最適化(SEO)につながる 適切な見出し構造や画像の代替テキストの設定は、検索エンジンからの評価を高め、検索結果の表示順位上昇が期待できる。
企業のブランド価値向上につながる 企業の社会的責任(CSR)の観点からも、アクセシビリティへの取り組みは重要な要素として評価される。

2.まずはウェブアクセシビリティ診断


Webサイトのアクセシビリティを診断する方法にはいくつかの選択肢がありますが、専門知識を要求されるため、慣れない方にとっては難しいでしょう。
診断結果から改善計画を立てて実際に改修作業を行う必要があるため、多くの企業では診断から改善提案、さらに改修作業までを一貫してサポートしてくれる専門会社に依頼することが一般的です。

弊社では、Webサイトの診断結果による改善策の提案から改修作業まで対応しています。
https://4qualia.co.jp/web/accessibility/

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3.アクセシビリティの具体的な改善策

ここでは、Webサイトのアクセシビリティを向上させるための具体的な方法を紹介します。

視覚性を向上させるための改善策

視覚に障害のある方も快適にWebサイトを利用できるよう、以下の改善を行うことが重要です。

画像に適切な代替テキスト(alt属性)を設定する
  • 商品画像であれば具体的な説明、装飾的な画像の場合は空のalt属性を指定
  • フォントサイズは、emやremなどの相対単位を使用
  • テキストと背景のコントラスト比は4.5:1以上を確保する
  • 文字を縁取ったり、文字の部分の背景に色を敷く
  • 背景がグラデーションの場合は、最もコントラスト比が低くなる色の組み合わせで判定
  • 大文字のテキストまたは18pt以上のテキストの場合、コントラスト比は3:1以上が基準となる
  • 見出しタグ(h1~h6)を設定する
  • 見出しを使ってテキストを分割し、視認性を高める
  • 操作性を向上させるための改善策

    マウスを使用することが難しい方も操作が簡単にできるよう、以下の改善策を実施しましょう。キーボードだけですべての機能が操作できるようにすることが重要です。

    Tabキーでフォーカスを移動できるようにする
  • 画面の表示順序と一致するように論理的に設定する
  • フォーカスインジケータが視覚的に目立つデザインにする
  • ラベルと入力フォームを紐づける
  • 入力フォームとラベルを明確に関連付けることで、ユーザーがどの入力欄に何を入力すればよいかを直感的に理解できるようにする
  • 入力エラーが発生した際は、エラーの内容と修正方法を表示する
  • エラー箇所の色を変えるなど、デザイン的な工夫も必要
  • 4.アクセシビリティを運用するための6ステップ


    アクセシビリティを運用するための6ステップ

    Webサイトのアクセシビリティの効果的な改善・運用を行うには段階的なアプローチが必要です。
    ① Webサイトの現状を把握する
    ② アクセシビリティ対応の要件を定義する
    ③ 品質保持のための運用要件を決定する
    ④ 運用ガイドラインを作成する
    ⑤ Webサイトに反映する
    ⑥ 品質を保持するための運用を開始する

    それぞれのステップについてご説明します。

    ① Webサイトの現状を把握する

    まずは、現在のWebサイトがどのような状態にあるのかをアクセシビリティの観点から確認しましょう。具体的な方法としては、自動チェックツールの使用などが挙げられます。

    ② アクセシビリティ対応の要件を定義する

    現状把握で見つかった課題に基づいて、具体的な対応要件を定義していきます。国際的なガイドラインであるWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)を参考にして、自社のWebサイトに適した対応レベルを設定しましょう。

    ③ 品質保持のための運用要件を決定する

    アクセシビリティの品質を継続的に維持していくための具体的な運用方法を決めます。誰がどのような役割を担当するのか、それぞれの責任範囲はどこまでなのかなど、具体的に定めておくことが重要です。

    ④ 運用ガイドラインを作成する

    実際の運用に向けて、具体的なガイドラインを作成します。サイト制作に関わるすべての担当者が理解できるよう、以下についてまとめましょう。

  • HTML/CSSの実装ルール
  • 画像の代替テキストの設定方法
  • リンクテキストの書き方
  • 文章作成時の注意点

  • 現場で判断に迷いやすい部分については、具体例を交えて詳しく説明することをおすすめします。

    ⑤ Webサイトに反映する

    定義した要件とガイドラインに基づいて、Webサイトにアクセシビリティ対応を実装していきます。対応後は必ずテストを行い、意図したとおりの改善が実現できているかを確認しましょう。

    ⑥ 品質を保持するための運用を開始する

    実装が完了したら、定めた運用要件に従って継続的な品質管理を開始します。定期的なチェックと改善のサイクルを確立し、新たな問題点があれば早期に発見して対応できる体制を整えましょう。

    自社での対応が難しい場合は専門家に相談を

    アクセシビリティの診断は、ツールを利用することで自社でも実施可能です。
    またWebサイトの構築スキルがあれば、診断結果に応じて自社で改修を施すこともできます。
    しかし、診断や改善の実行には専門性やスキルが求められるため、自社で対応できるという会社は少数です。専門人材がいない場合は、外部の専門家に頼ることも視野に入れると良いでしょう。

    5.まとめ

    ウェブアクセシビリティとは、障害や年齢に関係なく、すべての人がWebサイトを快適に利用できるようにする設計方針です。たとえば、高齢者向けに文字サイズを調整しやすくしたり、手が不自由な人でもキーボードだけで操作できる仕組みを導入することなどがあげられます。

    アクセシビリティの改善は法的要件としての重要性が高まっているだけでなく、Webサイトの使いやすさ向上やSEO効果、企業のブランド価値向上にもつながります。実施には、段階的な運用と改善が鍵となるでしょう。

    弊社のウェブアクセシビリティ診断では、診断を行うページ数や適合レベルなどの要件に合わせて、専門スタッフが診断をご支援します。
    まずはお気軽にご相談ください。
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